日本肩関節学会の取り組み

海外だより

KSES-JSS トラベリングフェロー帰朝報告

長谷川 彰彦

大阪医科薬科大学整形外科

2023年3月6日から4月2日の4週間、KSES-JSS Travelling Fellowshipにて広島大学の原田洋平先生とともに韓国の19の施設訪問とKSES annual meetingに参加する機会をいただきました。前半を原田洋平先生にご報告いただきましたので、私は後半の3,4周目の訪問先についてご報告いたします。
多くのトップアスリートの治療を手掛けておられるJin Young Park先生(Neon Orthopaedic Clinic)は外来4部屋を巡回するようにして効率的に進めており、約5時間の外来で64人もの患者さんを診察されていました。診察は丁寧で、エコー(エラストグラフィーも)を使ってリアルタイムに患者さんに説明する姿が印象的でした。
2022年のKSESのpresident であるYang Soo Kim先生(Seoul St. Mary’s Hospital)には腱板大・広範囲断裂に対するbiceps reroutingと、アキレス腱のallograftを用いたLower Trapezius transferといったユニークな手術を見せていただきました。
KSESのsecretary general、Sae Hoon Kim先生(SNHU: Seoul National University Hospital)には筋前進術を併用した鏡視下腱板修復術など4件の手術を見せていただいきました。加えて手術後にはSNHUのキャンパスツアーに連れて行っていただきました。
Young Kyu Kim先生(Gacheon University Gil Medical Center)にはプレゼンの機会をいただいたあと、4件の手術を見せていただきました。Kim先生には2019年のGachon shoulder symposiumにお招きいただいて以来でしたが、私のことを覚えていてくださって感激しました。
Joo Han Oh先生(Seoul National University Bundang Hospital)は朝、自らホテルに迎えにきてくださいました。Mini symposiumで発表の機会をいただきましたが、自チームの発表内容に対しては鋭い(厳しい?)ご指摘をしておられて、締まりのある雰囲気でした。手術中にはコンセプトやテクニックについて多くの説明をしていただきましたが、こちらからの質問に対しては必ずご自身の論文をベースに、エビデンスに基づいた回答をしてくださったことと、その際にも手術のスピードが落ちないのがとても印象的でした。
週末は土曜日にJae Hoo Lee先生とHo Won Lee先生がソウル観光に連れて行ってくれました。トルコ、タイからのトラベリングフェローとともに韓国王朝の服をレンタルして景福宮(キョンボックン)を観光しました(写真1)。

写真1:景福宮(キョンボックン)にて。トルコ、タイからのトラベリングフェロー達と

日曜日はHyeon Jang Jeong先生に案内していただき、トルコからのトラベリングフェローとともに朝8:30にホテルを出発してDMZ(demilitarized zone:韓国と北朝鮮との実効支配地域を分割する非武装地帯)ツアーに連れて行ってもらいました。北朝鮮と陸続きに隣りあわせにあるという国際事情を垣間見ることができました。
Woong Kyo Jeong先生(Korea University Anam Hospital)には整形外科全体のカンファレンスに参加させていただいたあと3件の手術を見学させていただきました。トラベリングフェローとして日本を訪問したいと言っておられて嬉しく思いました。
Kyu Cheol Noh先生(Hallym University Kangnam Sacred Heart Hospital)には NavigationとPSIの両方を使用したRSAなど4件の手術を見せていただきました。夕食時は若いYong Tae Kim先生、Jung Youn Kim先生らの参加によりこれまでで最大の飲酒量になり、記憶は途切れましたが大変印象に残るディナーとなりました。
Chris Hyunchul Jo先生(SMG-SNU Boramae Medical Center)を訪問した際は前日の深酒の影響を受けて二日酔いのままの訪問となったため、「What happened? You look completely different!」と驚きの表情で迎えられてスタートしましたが、朝からプレゼンテーションの機会をいただいた後、その後に筋前進術を併用した腱板修復術など5件の手術を見せていただく中で二日酔いから回復し、この日もきっちり二次会まで連れて行っていただきました。
韓国肩肘学会のBig boss、Yong Girl Rhee先生(Myongji Hospital)には8件の手術を見せていただきました。どの手術も「Very easy!」と言いながらよどみなく進めていかれるのが印象的でした(写真2)。
トラベリングフェローの最後には30th Annual International Congress of the Korean Shoulder and Elbow Society (KSES)に参加しました。学会ではこれまでの訪問先でお会いした先生方に数多く声をかけていただきました。Traveling fellow sessionでの発表を無事に終え、会長のSang-Jin Shin先生から立派なcertificateをいただいた時にはフェローシップを何とか完走できた安堵感がありました(写真3)。

写真2:Yong Girl Rhee先生(中央)を囲んで
写真3:30th Annual International Congress of the Korean Shoulder and Elbow Society (KSES)において、Sang-Jin Shin会長(中央)からCertificateをいただきました

KSES / JSS Travelling Fellowとして4週間、71件の手術見学と10回のプレゼン機会をいただき、韓国における肩関節外科の治療について多くのことを学ぶことができました。韓国の先生方は論文を書くことに関して強い情熱があり、日本よりも数多くの手術をこなしながら着実にデータを蓄積して論文化しておられるように感じました。
また、KSES annual meetingは全ての発表が英語でなされており、学会全体として国際化へ向けて取り組む姿勢を強く感じました。
訪問先ではHost surgeon として私たちを迎えてくださった先生方、フェロー、レジデントも含めてKSES memberの皆様には大変手厚いおもてなしをいただきました(写真4)。送り迎えはホテルロビーまで、駅での見送りはホームで電車が発車するまで、さらに週末は観光案内と徹底したhospitalityで歓待していただきました。また、食事についても前日何を食べたか、今日は何を食べたいか、など事前に尋ねていただいたり、酔い潰れるほどは飲ませないよう配慮していただいたりと、私たちの体調に対してもお気遣いいただきました。これらは全てこれまでに友好関係を築いて来られた肩学会の先輩たちのおかげと感謝しております。
最後に、今回のtraveling fellowshipに際しましてご尽力いただきました理事長の菅谷啓之先生、国際委員長の三幡輝久先生、面接で選んでいただきました国際委員の先生方、事務局の川村さん、ご同行いただき、私のわがままにつきあっていただいた原田洋平先生、長期出張を許可いただきました大学及び関連病院の先生方に深謝いたします。とても楽しい4週間でした。若い先生方には是非とも次回のトラベリングフェローに応募していただきたいと思います。

写真4:食事会での1枚。左から筆者、Joo Han Oh先生、Jieun Kwon先生、Chris Hyunchul Jo先生、Yon-Sik Yoo先生、Hyeon Jang Jeong先生

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